第2回 ラムサール条約

 仏沼湿原を取り上げた新聞記事やホームページに必ず出てくる言葉、ラムサール条約。この肩書き、どうやらスゴいみたいだけど、何なのかよく分からない。そんな感想を持つ方は多いと思います。最近、ラムサール条約という言葉だけが多用されて、中身はあまり紹介されていません。今回は、仏沼湿原を語る上で必要不可欠な「ラムサール条約」を紹介します。ラムサールとは中東イランのある地方都市の名前です。1971年、ここに世界各国の担当官が集まり、渡り鳥や湿地環境の保全について話し合いが行われました。その時に交わされた国際条約が「特に水鳥の生息地として重要な湿地に関する条約」通称「ラムサール条約」です。
 条約の目的は、主に水鳥や渡り鳥にとって大切な湿地環境を守ること。即ち、河川、湖沼、干潟、湿原、マングローブ林などが該当します。それが比較的狭い場所でも、人工的に作られた場所でも、とにかく鳥たちに必要ならば国際的に守っていこうという趣旨です。ラムサール条約と比較される肩書きに、白神山地の「世界自然遺産」があります。一見よく似た両者ですが、趣旨も認定基準も全く異なります。世界自然遺産は景色が極めて美しい、または自然保護に重要な、雄大な原生大自然に与えられる勲章です。認定には広い面積が必要となります。また人工的な場所は選ばれません。湿地環境だけに限定されてもいません。このように比較すると、国土の狭く開発の進んだ日本にとって、世界自然遺産は基準が厳しく、ブランド力は強いけれども利用しにくい制度です。一方、ラムサール条約は日本の風土や社会に適しており、日本向きと言えるでしょう。では仏沼湿原は何が評価されてラムサール条約に登録されたのでしょうか?それはもちろんここの主役たちです。彼らは一見地味ですし、釧路湿原のタンチョウや沖縄のヤンバルクイナみたいな知名度はありませんが、彼らは皆国際的にも貴重な鳥たちです。彼らがたくさんいるだけで、仏沼はラムサール条約に申請後即登録となりました。次回からは、彼ら「仏沼湿原の主役たち」を順番に御紹介します。
(デーリー東北 2008年4月18日掲載)

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