夏休みは自然や野生動物と触れ合う絶好の機会ですね。虫かごと捕虫網を持って野山でセミを捕ったり、水辺でトンボを捕まえたりと、子どもは特に昆虫が好きです。世界の国々の中でも、この虫好きは日本人の国民性と言われています。観賞用としてカブトムシやスズムシを飼う文化風習も、日本を含めた東アジア特有のものです。一方、欧米では虫には目を向けない代わりに、鳥を愛好します。そもそもバードウォッチングは欧米発祥のレジャー文化ですし、日本の子どもたちが虫捕りに興じているように、欧米の子どもたちはバードウォッチングに親しんでいます。一般の関心も極めて高く、野鳥観察だけを目的としたバードウォッチングツアーも大人気です。野生動物それぞれの特徴を考えると、野鳥は観察に最も適した生き物と言えるでしょう。多くが夜行性で目立たない哺乳類などとは異なり、鳥類の多くは昼行性ですし、勿論飛ぶので比較的見つけやすい野生動物です。また美しい囀りや派手な羽毛など親しみやすい特徴を持ち、大変目立って観察しやすいことが大きな利点です。しかし、どんな場合にも例外はいまして、鳥類の中にも目立たず観察が大変難しい種類も沢山います。その代表的な種類はクイナの仲間です。仏沼湿原には三種類のクイナ類、クイナ、ヒメクイナ、シマクイナが生息しています。彼らはヨシ原や草原の中に潜んで普段はほとんど姿を現しません。こそこそと草むらを歩き回り、ひっそりと子育てをしている彼らの存在は、これまでよく分かっていませんでした。彼らの生活ぶりは最近になってようやく注目され始めたばかりです。中でも最も数が多くて観察も比較的容易なのはクイナです。体長30cm、赤い目と嘴、紫っぽい顔、茶色に黒の縞が入った背中、白黒の縞模様の脇腹と、文字で表現するとなかなか派手な鳥に思えますが、写真の通り地味な姿をしています。しかし地味な鳥にかぎって驚くような美しい羽毛を持つもので、このクイナでは、尾羽の下に黒字に白とオレンジの模様の入った、大変美しい羽根を持っています。羽根一枚に宿る美しさを感じる鳥です。
(デーリー東北 2008年8月22日掲載)