第4回 オオセッカ

 今回はいよいよ仏沼湿原の主役中の主役、オオセッカの登場です。ここがラムサール条約に登録されたのは彼らのためであり、また彼らのおかげでもあると言っても過言ではありません。仏沼湿原のシンボル、三沢市の鳥、しかし実際に目にしたことのある方は少ないでしょう。オオセッカとは、どんな鳥なのでしょうか。初めに彼らのプロフィールを紹介しましょう。体長13cm、スズメよりも小さい痩せ型の小鳥です。「ホーホケキョ」の鳴き声で有名なウグイスの仲間で、ヨシの生えた湿地に棲んでいます。名前は漢字で書くと「大雪加」。関東以南に分布するセッカという小鳥に似ていますが、体が少し大きめなのでこの名が付けられました。写真の通り全身薄茶色で、背中の黒い斑点模様がチャームポイントですが、やっぱり単なる地味な小鳥です。そんな彼らが特別に騒がれる理由は数の少なさにあります。日本国内に棲むオオセッカは約2500羽、たったこれだけです。この数がどのくらい少ないのか、想像できますでしょうか。日本に住む小鳥がいったい何羽いるのか、実は全く分かっていません。しかし、例えばスズメは国内に数千万羽単位で生息していると推定されています。野山にいる他の小鳥類も、それぞれ数十万単位でいるのでしょう。これらに比べるとオオセッカは極めて数が少ない鳥なのです。また彼らを見ることができる場所も極めて限られています。現在の繁殖地は主に3ヶ所、仏沼湿原の他に、津軽地方の岩木川河口と茨城千葉両県の境にある利根川の河川敷だけです。中でも仏沼湿原は約1000羽ものオオセッカが棲む、国内最大の生息地です。2008年4月17日、仏沼湿原で繁殖シーズン最初のオオセッカが囀り始めました。彼らは渡り鳥で、4月から9月までここで過ごし繁殖します。彼らの姿を見るには、早朝か夕方が最適です。ヨシ原の至る所から、「ビジョビジョビジョ」とオスの囀りが聞こえるでしょう。またヨシの上を注目していると、オスが2mほど飛び上がりながら囀る姿に出会えると思います。今は5月中旬、ちょうどメスが巣造りを始める時期です。仏沼湿原は鳥たちの恋の季節を迎えます。
(デーリー東北 2008年5月16日掲載)

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