第7回 オオジシギ

オオジシギ

 仏沼湿原の近くには米軍三沢基地があります。連日世界最強の戦闘機集団が飛び交い、『野鳥の楽園』仏沼湿原にもその爆音を轟(とどろ)かせます。鳥たちはというと、そんな騒音にもお構い無し。人間の政治情勢に関係なく、彼らは彼らの生の営みを毎年繰り返しています。今回は米軍基地の街にちなみ、『生きた戦闘機』を紹介しましょう。このオオジシギはハトほどの大きさの地味な鳥です。漢字で書くと『大地鴫』。シギ類はスズメサイズの小さな種からカモメほどもある大きな種まで含んだバラエティーに富むグループで、特にその嘴は、上へ反っているもの、下へ曲がっているもの、先がヘラ状のものなど変わった種類が沢山います。その中に、長い真っ直ぐな嘴にずんぐり体形で中サイズの一群がいます。彼らはいつも地面にへばりつくように暮らし、背景と同化しているので見つけ難く、足元から飛び立つまで気付きません。そんな彼らは『地シギ類』と呼ばれており、日本には姿が大変似た6種類が記録されています。オオジシギは最も体が大きい種類です。この鳥の最大の特徴は何と言っても、メスにアピールするための誇示行動(ディスプレイ・フライト)です。繁殖期になるとオスは数羽で集まり、電柱や杭の上で「ジジジジジジジジジジグイー、ジジジジジジジジジグイー」と絶えず鳴いています。気分が盛り上がってくると、今度は飛びながら「ジジジジジジジジジジグイー、ジジジジジジジジジグイー」と旋回(せんかい)し、ますます盛り上がると「グイーグイーグイーグイー」としり上がりにテンポを速めつつ上昇していきます。そして突然身を翻(ひるがえ)し一気に急降下。その際、翼を半分折りたたみ、尾羽を全開にして「ガガガガガッガッガッガッ」と大きな音を響かせます。この爆音、まさに『生きた戦闘機』です。彼らは遠くオーストラリアで冬を越し、夏になると繁殖のためにはるばる戻ってくる渡り鳥です。日本でしか繁殖しないと言われており、この爆音を聞くことができるのも日本だけです。これを聞くためにわざわざ来日する海外の野鳥愛好家も多いとか。日本が誇る『平和な戦闘機』なのです。(デーリー東北 2008年6月27日掲載)